初めての吹きガラス工房

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GLASS-LABアシスタント石川です。今日もグラスに触れてますか?
金木犀の香が心を和ませてくれる季節になりました。

以前、私がこのGLASS-LABコラムでガラスはどうやって作るのかという疑問を「ガラスって何?【何でできてるの?】」の表題で書かせて頂いたのですが、あのガラスの製造方法の発見から生成までを調べてからずっと、ガラスを製品にする工程を見てみたいと思っていました。人の興味とは業が深いと申しますか。
※ガラスの製造方法発見から生成までのコラム3部作はこちら
ガラスって何?【何でできてるの?】
https://glass-labo.com/old/whatisglass1/
ガラスって何?【製法発見】
https://glass-labo.com/old/whatisglass2/
ガラスって何?【起源編】
https://glass-labo.com/old/whatisglass3/
そんなわけで椎名代表にガラス工房に見学に行きたいとお願いをしていたのですが、すっかりコロナだなんだで遅くなってしまいましたが先日、ついに行ってきました。
昨今でのガラス製品の成型は機械で型に流しこむ製法が多くなっています。量産ができるので私が今まで生きてきた中でガラス製品を意識せずに見た7割は機械で作られたものだと思います。ですが、型に合わない物が欲しい、他にはないオリジナルの物が欲しい、職人の技術を駆使した物が欲しいなど色々なご要望は沢山あります。その様な製品はどうやって作るのか?代表的なのが吹きガラスという成型方法です。大抵の方がテレビや画像で一回位は見た事があるのではないでしょうか?では、なぜそれ程テレビでその光景を見た記憶があるかというと、吹きガラス職人さんも段々数が減っていてとても希少であり、ガラスがとても身近で誰もが知っているからこそ、見ていて面白いからだと私は思うんですよ。
私も以前からテレビで吹きガラス工房さんを見ていたし、最近体験マニアな私は今度、体験教室とか申し込むなら下見もできるしと軽い気持ちで見学に臨んだわけなのです。

Let’s工場見学

お邪魔させて頂いたのは江東区の猿江にある猿江ガラスさんです。
外側からはガラス工房だとはあまりわかりません。下町の工房や工場ってどこも結構小さめだったりするのですが、猿江ガラスさんは入ると広い!天井が高くとられていて空間が大きい感じがして少し圧倒されました。そして何より暑い。室内は窓を開け扇風機が回っています。見回すと熟練の職人さんって感じの方もいる中、若い方や女性の職人さんも。(皆さんが作家さんとして活動をされていますが本日は職人技と言われる事についてのコラムなので敢えて職人さんと記載させて頂きます)
こちらでは2人1組で作業をするとの事で職人さんには一人アシスタントが付いている。一組に一つのゴルフの練習場位の間隔の作業スペースが確保されています。その中心にとても大きな炉があり横にも小さい炉があります。真ん中にガラスの溶解炉、横にあるのは焼き戻し窯だと思われます。近くまで行って見せて貰うがガラスの溶ける温度は1400度以上、中に液状になったガラスがあるかどうかもいまいち分からない位に真っ赤に光っている。熱い、顔焼ける。目が焼ける。覗き込もうにも熱くて、中に海軍本部元帥の赤犬でもいるんか。小さなキラウエア火山か。室内が恐らく35度前後ですが炉の半径1メートル以内はは50度近くあると思う。真夏は室内が60度になる事もあるそうで痩せそうと安易に考えてしまう私は大馬鹿です。沖縄の琉球ガラス作家さんは夏季休暇を長くとって夏は出ない方もいるとか。この暑さなら気持ちは凄くわかる。この中で動きまわるのは大変だ。

奥で電気シェードの修復、手前でグラスの様な形態の物、真ん中でお皿、反対奥でグラスを制作していたのですが、電気シェードの修復はかなり大きくなるよ。と教えて頂き期待をしながら、真ん中のお皿が今、GLASS-LABで加工真っ盛りのお皿。これは是が日にでも見なくてはと思い最初から最後まで見せて頂きました。

お皿ができるまで

工程は徐々に徐々に慎重にというのがしっくりくるかな。液状のガラスを吹き竿と言われる太く長い鉄のストローの様な棒に巻き付けてすくい、マイスペースに戻り、濡れ新聞紙と布?様なものでくるくる形を整えて、そして吹く。またくるくる形を整えて、溶解炉でさらにガラスを巻き付けます。作品の大きさになるまでこの作業を何回も続けます。これが凄いんです。力加減が狂えば形は歪むし、ガラスですよ。重ねれば重ねるほど絶対に重いんですよ。このお皿は分厚くガラスの中に空気が流れるように入っているのが特徴で伊勢志摩サミットや海外の三ツ星レストランの依頼でこちらで制作されているめちゃくちゃ洒落なお皿なのですがその分めちゃくちゃ重いんです。1キロ以上はある。それをあの長い棒をぶつける事もなければ滑り落ちる事もなく、しゅしゅっとくるくるっと、もうブルースリーだよ。燃えよドラゴンだよ。熱いよ。
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ガラス炉の液状のガラスを巻き付けてすくう。
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空気を吹き込んでふくらませる
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形を整える。まだガラスを巻き付け整える
写真を撮り忘れやったのですがこここでアシスタントさんの方も同じように空気を入れたガラスを持って主となるガラスに巻き付けると空気の模様ができる
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大きさを測る
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結構大きく丸くなってきた
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アシスタントさんの準備
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合体?したらお皿になる様に上部分を切り取る
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焼き戻し
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ぐぐぐーーーって感じで広げて
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広がってきた
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大きなピンセットの様な器具で広げたり平らにするのに出刃包丁の様な器具で抑えたりして凄い広がった。大きさがOKだったらひとまずは成形は終了。
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ここから約一日かけてこの中でゆっくりと冷却する。

これがお皿を作るまでの工程だったのですが過い大変。吹きガラスって一個体なんですよ。一個の個体を熱して丸めて膨らまして広げて、継ぎ目がないんですよ。凄くないですか?スライムが形を形成するの如く、見ているとどんどん形になっていく事に興奮すら覚えます。私の心の中でのリアクションは半端じゃなかったですよ。えーーーマジ?すごい。そんな扱えるものなの?空気こうやって入れるの?曲げた!綺麗すぎる!私がちょろちょろして気を使わせてお仕事の邪魔になってはいけないと思ってリアクションもせず、長居は避けたのですが本当はずーっと見てられるし、もっと見ていたかった。そしてまた次のお皿を作り始める作家さん。
私はGLASS-LABで何枚もこのお皿を見て触っているのですが、凄いのは空気の入り方はそれぞれ違うものの、大きさはほぼ統一されていて凹みの部分もほぼ違いがない。重ねてみるとしっかり重ねられるんです。それを手作業で作るって正に職人技。2人で一枚に相当な手間と時間が掛かる。

さらにここからGLASS-LABでの加工の工程が入るんです。本当にGLASS-LABで働く前の私は何も考えずに食器を使っていて何なら高級な物を高いと感じていたし価値をわかってなかったと痛感させられました。

かなり大きくなると聞いていた電気シェードは何回も何回もガラスを巻きとり空気を入れるを繰り返して、Lサイズのピザ位の位、大きな球体になってた。最終的には大きすぎるのか三人がかりだった。(写真を撮り忘れてすみません。)
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他に韓国料理の石鍋みたいなサイズの鉄の鍋でくるくる回して形を整えたりして、この作業凄く気持ちよさそう。転がらされてるガラス玉が可愛い。
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これは何になるのかな?来月辺りにGLASS-LABに来るそうなので楽しみ。S__18284622
先ほど出来たお皿がGLASS-LABに運ばれてきた。ここからはGLASS-LABの職人が技を尽くします。
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この吹き竿の痕を削って磨き、透明度を残したまま傷一つなく安定する底を作ります。
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GLASS-LABの磨き技術で底も傷一つないつるつるのピカピカになりました。(GLASS-LABの工房のレポートはまた後日にまとめたいと思います。)
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完成!!めちゃくちゃ綺麗なガラスのお皿が出来ました。

見学してみて思ったこと

一通りガラスが製品になるまでを見たのですが、改めて思うのはもっと早く見ておけば良かった!あのガラスをぷーーーってやつやってみたい!とか、いい大人の癖に軽く言ってた自分にバックドロップを掛けてやりたい。
職人は凄い。先人達も凄い。ガラスも凄い。ガラス製品に関わらず日本の伝統工芸の職人は年々、数が減っているのが現状です。この匠の技術を残したいと心から思いました。何も考えずに大人になってしまった私は下町育ちの癖に江戸の伝統工芸について何も知らなかった。大人になり良い物を持ちたい、贈りたいという思いでやっと伝統工芸について知る様になりったにすぎません。それも見たり買うのみでどう制作されているのかまで知らなかった。ポケベル最終世代の私はインターネットもそこまで普及している時代ではなかったし、工芸品や職人についても学校では教わりませんでした。今はもっと前に知りたかったと後悔するばかりです。大人が見ても楽しいですが是非、お子様がいる親御様には子供達の知識や丁寧に作られた物の価値を見る力、話題や想像力、やりたい事を見つけるのに役立たせるために、お出かけ先での工場見学やワークショップにはどんどん参加してほしいと思いました。

■猿江ガラスさん
こちらのホームページ凄くカッコいいです。作品一覧だけ見ても職人さん達の凄さがわかります。
https://sarueglass.com/
猿江ガラスの皆さんありがとうございました。

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